舌切りすずめのおばあさんは?

前日に歩き疲れ、足の付け根が痛かったので、本でも読もうかと言うことにしたのでした。手に取った本は“ちゃあちゃんのむかしばなし”。高知新聞に連載されていたという昔話集です。小学生も中学年なら、簡単に読めそうな本です。ただし、内容は一話一話独立していますので、数多くのお年寄りから実地に収集された労作です。

以前に少しは読んでいましたので、途中から読み始めます。2・3話、読んでびっくりしました。

その話は“舌切りすずめ”だったのですが、その内容がまったく別のお話とドッキングしていたのです。それは“若返りの水”というおじいさんが若々しい若者になり、欲張りなおばあさんはこの水を飲み過ぎ、赤ちゃんに戻ってしまうというお話です。この話の中では、舌を切られたすずめは、ふだんから優しかったおじいさんにはおいしいお酒で接待しただけではなく、舌を切ったおばあさんにも同じようなおもてなしをしたのです。

話の結末は、欲張りなおばあさんはお酒を飲み過ぎ、赤ちゃんに返ったという結末は同じですが、優しいすずめはおじいさんにもおばあさんにも同じような接し方をしたというのです。

広野幼稚園は“舌切りすずめ”という話題を非常に大事にしていまして、普通の話の中では、おばあさんは大きなツヅラをもらって帰ると、毒蛇やお化けなどのたぐいが出て来るわけですが、「仮に、小さなツヅラを持って帰ったとしたら、中には何が入っていたでしょう」という問題をすべての先生方にたずねています。

この中で出色なのは、おばあさんの心をよくする煙(浦島太郎をイメージ)が入っていたというのがあるのですが、この昔話を何度もイメージしている私としても、とても想像できないことでした。改めて、イメージの広がりには際限がないなあと感嘆しました。

そこで考えたことは、広野幼稚園の絵画指導を長年に渡ってご指導いただいている奥山先生が、常々“広野幼稚園でも何か新しい技法の発掘を!”のご要望に応えることよりも、何かの昔話と別の昔話をドッキングして新しいテーマを見つけることで、そのご要望に応える道もあるのではないかと思ったのでした。

何しろ、明治の文豪、尾崎紅葉が“鬼桃太郎”という創作話を作っているということに、非常に感動し、昔々のその昔、何十年にも渡って言い続けて来ている人間もいるのですから・・・。

自称 保育バカ