一人の教材業者の退職前のお話から

今年の春、広野幼稚園が長年に渡り、学生さんたちの実習を引き受けさせていただいている聖母女学院短期大学で一時期教鞭を執られていた児童文学者の今江祥智先生がなくなられたことはこのブログでも書かせていただきました。その後日談のような話です。

昭和48年頃、この短大で、当時の広野幼稚園のブックリストが紹介されたことは、どこかで書いたと思うのですが、この頃、入社された方々が60歳で定年という名の退職期を迎えられているのです。そのお一人が、この度、嘱託社員という名に変更を余儀なくされたのでした。

昔、この方から聞いた話では、入社以来、自分が勤務する福音館書店のすべての月刊誌を自費で購入し、自己の実力の向上に務められていたとのことでした。最近は、時々絵本に対する熱意とその博識に敬意を表していたところです。

今、思いますに、この方が入社された頃には、自分は絵本について書いたり書かせてもらったりしていたこともあり少々天狗気味になっていましたので、この方が実力をあげておられるのに気づくのが遅れ、今となってはもっといろいろな話を聞かせてもらっていたらよかったのにとの思いがしきりです。職員室にいた先生たちももう少し影響を受けていてほしかったとの思いもあります。

この方からお聞きしたことで、一つの伝聞として残しておきたいことは、昭和50年頃、聖母女学院短大では、卒業時に(20歳の)学生が自分が読んだ絵本の範囲内で、幼児たちに読み聞かせるブックリストをつくらねばならなかったという話です。初めてきいたことなので、相当以上に驚きました。改めて、当時の広野幼稚園のブックリストは世の中にそれなりの影響を与えたものだと評価していただいたようなものだと喜んでいます。

ひるがえって、現在、雨後のたけのこのごとく新しい保育所などが設立されていますが、保育に対する研究心や実状はどうなのでしょうか。かなりの園がブックリストぐらいは作られているでしょうが、未だに、担任たちの思いつきで子どもたちの読み聞かせを行っている園も少なくないのが実状でしょう。お互いに、もう少し、子どもたちのためにがんばりたいものです。

園長