つきに恵まれて?(古きを訪ねて新しきを知る)

 ある日のこと、朝から古い古い幼児教育に関する月刊誌(幼児開発)をぱらぱらとめくっていると、“幼児にわらべ歌”という記事に目が留まりました。“そうだそうだ”とうなづきながら読み飛ばしたのでした。

 そうして、この幼児開発には、広野幼稚園の子どもたちの保育を受けている特集が組まれていたはずと思いながら見るともなく見ていますと、1枚の写真(カルタの対戦風景)に目が行きました。

 今も子どもたちが取り組んでいるカルタ。この雑誌の中には一枚のカルタを裏返した写真があったのでした。すなわち、たとえば“いぬもあるけば、ぼうにあたる”という絵札の隣に、絵札を裏返した札(無地)が写っていたのです。

 一瞬“これは何?”と考えましたが、まったく思い出せません。写真の解説を読みますと、何と、無地の札は、対戦する子ども同士が、相手の了解を得て1(2)枚ずつを裏返しにしてから、対戦していたというのでした。

 対戦している子どもは、文字を見て取るのではなくこの無地の裏にはどのような文字(ことわざ)が書かれていたかを覚え、読まれた瞬間、この札に手を伸ばして取るという、今とは別の頭の回路を使う方式だったのです。

 もちろん、クィーン位などを決める正式な競技カルタでは、場に並んでいるカルタの一枚一枚(の位置)を、対戦する二人はすべて覚えている訳ですが、その第一歩とでも言うべきことを、競技方式で30数年前にはやっていた。ところが、最近の30数年間では、まったく忘れ去られたいたということに仰天するとともに、人間の記憶保存の難しさに感動したのでした。

 この再発見は、やはり、“保育においては、常につきに恵まれている”と言うべきなのでしょう。  

自称 保育バカ