朝礼で

私が父の急病もあって 急遽 美晴幼稚園に勤務するようになったのが1991年の5月。

その年の札幌市私立幼稚園教育研究大会の記念講演の講師は 乳幼児の発達心理学がご専門で お茶の水女子大学で長く教鞭をとられた後 日本で唯一の私学の特別支援学校であった愛育養護学校に転出され現場で保育にあたられていた 津守 真 先生でした。

演題は「倉橋惣三と私の保育論」で 現代の日本の幼児教育の基礎を築かれた倉橋先生の保育論が中心のお話しだったのですが 講演の冒頭 津守先生が当時担当されていた子どもとのエピソードを語られました。

「この会に来るため出かける朝 担当している子どもが 滑り台の上で嘔吐しました。どうしてなのかいろいろ考えてみたのですが きっと この子はさまざまなことを受け入れきれずに葛藤していて そのことが嘔吐というかたちであらわれているのかと…」

なぜ 津守先生が市民会館に集まった市内の1,000名をこえる保育者にその事を語られたのか 当時の私には理解できず 20年の間 こころにひっかかっていた 大きな問い でした。

数年前のある日 美晴幼稚園で子どもの様子を見ている時 すっとその問いの答がわかりました。

人間が 人間関係や場に適応するということは その個人が他者(周囲)に何らかの働きかけをすることからはじまるのではなく その人が他者(人や場など自分以外のすべて)を受け入れることからはじまる ということ…。

このことを腑におとしたうえで 子どものこと 子どもたちのことをみると いろいろな意味で視野が開け 可能性も開けてきます。

今日の職員朝礼で 私から職員全員に このことのエッセンスを話しました。

私が20年のキャリアの中で気づいたこと すぐには理解できないかも知れないけれど 今朝 話しておきたかったのです。