カオスモスの運動と逆教育−3
この号は背景を書かないと誤解を招きかねないので長くなります。
私(園長)は障がい児保育が専門ではありません。しかし ここ数年 全日本私立幼稚園連合会の推薦で 文部科学省の会議の委員や内閣官房の会議の構成員として 様々な施策づくりに関与してきました。(その内容は巻末のアドレスにアクセスしてみてください 会議によっては構成委員の名簿ばかりでなく会議録が公開されていて私の発言を読む事ができます)
会議などに参画する中で 様々な障害者団体や家族の会の代表者のお話しを伺い また 日本ばかりでなく世界の先進事例と考えに触れる機会を得て 自分の思いや考えをふり返り 進むべき方向性を再確認させていただきました。(美晴幼稚園の目指すものや 今現在のあり方も間違いはありませんでした)
いずれの会議も 乳幼児の段階の教育保育機関からの参画は私一人だったのですが 障がいのある子どもの受け入れや 教育保育の機会を保障ができていない学校教育段階は義務教育(小・中学校)を除く幼稚園(保育園)と高等学校および高等教育機関(大学など)だ ということが 事ある毎に指摘され 特に幼児教育段階の機会保障の遅れについては厳しく指摘されました。
平成19年に改正された学校教育法で幼稚園を含む全ての学校での特別支援教育の実施が規定され 昨年4月施行のいわゆる障害者差別解消法で 「不当な差別的対応」と「合理的配慮の不提供」が禁止されても 公私を問わす幼稚園での「気になる子ども」へのバリアの緩和は進まず むしろ 悪質化(正面から断らず「学齢毎の入園の基準?」を匂わすなど…)している実態は否めません。
これまで 障がいのことばかり書いてきましたが 今の子どもたちは 国籍や母語 文化や宗教の違いなど 多様性を包含した社会で共に生活し学び合い そして幸福を求めて生きてゆく世代の人たちです。
社会の一部である学校や幼稚園も同様であるばかりか むしろ 現実の社会の半歩先の場づくりをしなくてはいけないはずです。
その時 必要な概念と行動が 「カオスモスの運動」と「逆教育」だと私は考えています。(前の号でカオスモスの運動には触れたので この号は「逆教育」を中心に…)
「逆教育」は 内閣官房の2020ユニバーサルデザイン心のバリアフリー分科会の場で 東京都の2020パラリンピック担当職員がIPC国 際パラリンピック委員会のクレイバン会長が視察の折にお話になったこととして紹介してくださいました。
「教育」は 前の世代から次の世代へ 言い換えれば大人から子どもへ といった方向で語られ実行されるもの といった既成概念がありますが 新しい社会づくりをするような時は 逆の方向性 つまり 子どもから大人へ そして 社会全体の動きへ といったベクトルが作用することで おおきく歯車が動きだすのだ と。
既成概念にしばられていない 次世代を生きる子どもの意識を変えることで 子どもの具体の行動が変わり そのことが 大人に気づきと学びを与え 大きな社会変革の波となる ということです。
「お口にチャック 手はお膝」 は 大人が都合よく子どもに与える教育を前提にしていて そこでは効果的かも知れません。
しかし 変革期を生き抜く子どもへの教育は 子どもが子どもらしく輝く場を準備しながらも 絶え間なく大人が子どもに学び 場をつくり変えて行くようなあり方が求められるのでしょう。
美晴幼稚園は 美晴の若い保育者はそれができます。(至らぬことばかりではありますが…)
それは 表層的な保育技術や技能ではありません。その美晴の保育と保育者のことは次回で。
文部科学省 障害者差別解消法対応指針 http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/material/1364725.htm
文部科学省 発達障害を含む障害のある幼児児童生徒に対する教育支援体制整備ガイドライン〜発達障害等の可能性の段階から、教育的ニーズに気付き、支え、つなぐために〜 http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/1383809.htm
内閣官房 ユニバーサルデザイン2020行動計画 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tokyo2020_suishin_honbu/ud2020kkkaigi/
2017年4月8日 10:43 AM | カテゴリー:保育の軌跡 | 投稿者名:どんりゅう