カオスモスの運動と逆教育=美晴の保育

園長(私)が美晴幼稚園の創設者であった父から遺志として引き継いでいる唯一最重要の保育者としての在り様は「子どもから学べ」ということです。

昨日 小学校から届いた礼状の中に平岸高台小学校の学校だよりが同封されていて 大牧校長先生がご自分のお母様からの言葉も引用されて「親は 子どもと一緒にしたり 見守ったり じっと話を聞いたり 伝えたりと その時々で『今 必要な支援は何か』を直感的に判断しながら 子どもと関わっていくものです。私も昔 わが子が生まれ試行錯誤していた頃 『親というものは わが子とのかかわりから学び 子どもから親にさせてもらっているようなものだよ』と母に言われたことがあります。実は教師も同じで 児童への指導や保護者との関わりによって 教師として日々育ててもらっているのだと思います。」(一部抜粋)と書かれていました。

真理は 専門書や専門家あるいは上司の助言ではなく いつでも どこでも 子どもの中に 子どもとのかかわりの中にあります。

私たち保育者が 子どもやその周辺から発信されている真実を うけとめる準備ができているか そして 受けとめたことを 保育の中で具体にいかすことができるか が大事です。

世界のかわりめに生きる子どもたちの未来を見据えながら 幼児期の「いま」「ここ」を大事にする保育を矛盾なく実現するには 「一人一人の子どもが学びの主人公」 となる様に 保育者が意図と柔軟性を合わせ持ち 保育のかたちを多様に展開してゆくことで その可能性がひらかれるのでしょう。

保育者が

・一斉的な活動場面でも子どもの自由感を尊重すること。

・子どもの自由選択が可能な活動場面でもあそびを選ぶことが難しい子どもを注意深く見守り場やお友だちとのつながるチャンスを探ること。

・その子の発達の特性や段階を理解し自己課題と向き合うあそびや過ごし方を共に試行すること。

・クラスやグループ(集団)で過ごしたり一緒に活動することを嫌がっている様子の子どもでも遠くから聴こえる歌を一緒に口ずさんだりつながろうとしている子どもの思いを感じとれること。

・一見集団適応が難しいと認められる子どもを 取り出したり分離する支援ばかりではなく 幼稚園に共に居る意味を尊重した 情緒の安定を保障しながら 平行(並行)保育から共につながる道筋を模索する。

…。

多様な子どもたちと多様な保育を同時に展開してゆくと 子どもの動きに翻弄されてしまい 自分の存在位置がわからなくなったり 子どもが成長発達の道筋をどのようにして前に進んでいるのか わからなくなるものです。

実際 ここ数年 支援員や外部研究者の方々が断続的に保育観察して 保育者に助言をしていただく機会もありますが なかなか美晴の保育(子どもたち)の本質を理解していただくことが難しく 貴重な助言をいただきながらも迷いが深くなることも少なくなかったようです。

それだけ 美晴幼稚園の保育の実態と文化は特別なものといえるのでしょう…。

美晴の保育者にとって必要不可欠な資質は 経験の多い少ない とか 資質能力が高い低いといったことではなく その人の人格や人間性です。言い換えれば 何ができるか ではなく 絶えずこころを動かし自ら感じたことに忠実に具体の行動を考えられる ことです。その出発点や基準が 子ども です。

子どもを原点に周囲や関係に視野を広げれば 子どもや保育の実態が的確に理解できます。そうすると 実践すべき保育と指導・支援の具体の方向性がみえてきます。

あらかじめ解のない課題に向き合い 子どもと共に過ごす中で「最適な解」を求め ささやかな挑戦とふり返りを繰り返し 着実な歩みを続けるという営みが 美晴の保育といえます。

たぶん 無自覚だと思いますが 美晴の保育者は昨年度一年間 それが実践できていました。控えめに言うと できつつありました。

そう 美晴の保育は様々な困難さに挑戦していますが 若いリーダーと若い保育者が懸命の努力を重ね 一定の保育が実現できていて より充実するこの先がみえています。(これはすごいことだ! と我ながら思います)

たぶん 美晴幼稚園の保育スタイルが確立することは未来永劫ないと考えます。絶えず 子どもに寄り添い 子どもたちにとってより良い場になるよう挑戦し続けるのだと思います。

私が20年の美晴幼稚園園長としての経歴の最初の2年間 特別支援教育 幼児教育含め ほとんどの教科領域で思想(哲学)から新しい学校教育を志向していた上越教育大学大学院で学究の機会を得たこと(カオスモスの運動などの思想に出会えたのもこの場でした) また 国の会議の場で様々な知見や現状に触れる度 美晴幼稚園と重ね合わせ問題意識を更新してこれたことも 今とこれからの美晴幼稚園に大きな影響を与えています。

ブサイク(整った体裁ではない)かもしれないけれど美晴幼稚園のような幼稚園が存在しても良いと思うのですが…。

明日から 平成29(2017)年度の保育がはじまります。子どもたちみんなのその子らしい「いきるかたち」が着実にかたちづくられるように 共に過ごすことに幸せを感じながら 一日一日大切に保育を進めてゆきます。

園長 東  重満