3歳になったら幼稚園

  1. 法令で見てみると、「幼稚園教育要領」(幼稚園教育の根幹を国が定めているもの)の根拠法である「学校教育法第22条」に「幼稚園」に関する規定が定められており、ここに「3歳から小学校の修学をむかえるまでの「幼児」を預かる『学校』」という規定があります。さらにいうならば、「学校教育法」は、「教育基本法」(昭和22年)に論拠があるのです。
  2. 「乳児」(法令でいう「乳児」とは「児童福祉法第4条」に基づくと、「満1歳に満たない者」と定められています。これは、この法律には「保育所」の規定(第39条)があり、児童福祉を定めた唯一の法律となっています。「児童福祉法」は、さらに中核となる「社会福祉法」(昭和22年)にその論拠があります。)さらに、「児童福祉法」では、18歳に満たないそれ以上のものを「児童」(第4条)と規定しています。「児童福祉法」による年齢区分ですと、「児童(18歳未満のもの)」がその対象とされますが、通常「保育所」には、「小学校に就学するまでのもので、親の就労等により保育に欠ける者」が保育所という『施設』の対象児(「乳児」または「幼児」)になっています。

ここまでをまとめると、「幼稚園」とは、『学校』であり、「保育所」とは、『児童福祉施設』ということになります。

「保育所」は『乳児』『幼児』を保育する「施設」ですが、『乳児』は産休(生後8週間)明け以降で満1歳になるまでの子ども、『幼児』は満1歳以上小学校入学(満6歳以後の最初の4月という学校教育法によるので、6歳数か月)までという年齢幅があります。

「幼稚園」は満3歳より小学校に就学するまでの『幼児』を「教育」する「学校」です。したがって、「全日本私立幼稚園連合会」はキャッチフレーズとして、「幼稚園は子どもたちが初めて出会う『学校』です」という言葉を使っているのです。

 

 

  1. 子どもの成長で「乳児」「幼児」考えると次のようになります。

子どもの成長は、「遊び」を考えると理解しやすいです。「遊び」で考えると、「乳児」とは多くの場合、「実物」を使って遊ぶ子どものことです。たとえば、「唇」を使って、「バブバブ、ブルブル、ブブブブ」など「唇遊び」をし、唇の感覚・感触・操作の方法などを学びます。発達心理学者のピアジェなどは、この特徴を捉え、「感覚運動遊び」ということばを使っています。これに対して、「幼児」とは「間」を使って遊ぶことのできる子どものことである。「「人間」「空間」「時間」などに「間」があり、「幼児」はそれらで遊ぶことができるという点で、「乳児」とは異なっています。つまり人や物との関係の中で、時間軸でその関係を把握して行動することができるということです。たとえば、「予測する」「推測する」「期待する」といった行動が可能になります。これらの能力を利用して、同時に「言葉を介在したイメージを使い遊ぶ」ことができます。その特徴を捉えて、先述のピアジェなどは「象徴遊び」ということばを当てているくらいです。その頃には、「幼児」は盛んに、「みたて」「ふり」「みなし」を伴った「イメージの共有できるごっこ遊び」等をすることが多いです。「幼児」が、「ごっこ遊び」の中で「予測する」「推測する」「期待する」「イメージを(友だちと)共有する」能力を伸張させます(成長します)。したがって、この時期の「幼児」の特徴は、「遊び」の中で「「現実」と「イメージ」を共存」させて遊ぶことができるという発達時期特有の特性を持っています。

このように考えると、「乳児」を「幼児」に育てるためには、「みたて」「みなし」「ふり」といった「イメージ」とそれを生じさせる子どもの能力(たとえば、お母さんは次にどうするかを考えて、時間の先を「予測」したり、「推測」したり、「期待」する力)を育てる必要があるといえましょう。

「幼児」に食べ物に「みたて」た「砂」に対して、おとななどが「美味しいよ」と投げかけると、幼児なら「本当だね。美味しい、美味しい。」と受け応えをしてくれます。しかしこのことは児童期になるとやがて失われます。児童(「学校教育法」による学齢に達した子ども(=小学校に通うようになった子ども))になると、「おじちゃん、馬鹿だね~。砂だから食べられないよ。美味しくもない!」とあっさり返されてしまいます。これは、「嘘っこだけど、美味しいんだ」という気持ちがなくなってしまい、すでに「イメージと現実」を共存させて遊ぶことが必要なくなった(遊べなくなった)子どもの姿になります。もちろん、子どもは成長しているのですが、おとなに一歩近づいた悲しい姿でもあります。

 

このように考えてくると、「幼児」を「児童」へ成長させるには、「予測」に基づいて、「期待(こうしたい、ああしたいという)」を持って、「計画(こうしよう、ああしようという)」する力を育てる必要があります。子どもを成長させるためには、「遊び」が大切であり、各発達期を十分に充実させて過ごさせる必要があるといえましょう。ここで説明のために、発達心理学者のピアジェやワロン等を取り上げていますが、けっして特殊な事物(遊具や教具)だけで子ども成長をはかれるものではないといえましょう。

 

とくに3歳になったら、「他児」(「友だち」とか「他人」)の存在が大切なものとなります。他児との遊びを通した「やりとり」の中で、子どもたちはさまざまな事柄を「学んで」いくのです。その意味で、「3歳になったら幼稚園」というキャッチフレーズは3歳頃の子どもの成長には「他児」が欠かせない点を言い表しています(法律もちゃんとこの点を踏まえているかのようです)。