追悼

文部科学省初等中等教育局特別支援教育課 課長補佐でいらした瀬戸麻利江(享年31)さんが 美晴幼稚園の入園式があった4月10日にご逝去されたとの訃報が翌日伝えられました。

このブログを読まれる方で文科省の瀬戸さんを知る人は皆無でしょうし 私自身 メールでは何度かやりとりしましたが直接 瀬戸さんにお会いしたのは三度しかありません。それでも瀬戸さんのことはこのブログに記しておきたいと思います。

今年の4月1日から国の「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」が施行されました。このことにより各省庁が所管事業における対応指針を策定し昨年度中に通知し周知を図っています。

その文部科学省の対応指針の策定を取り仕切ったのが瀬戸さんでした。私は 学識経験者、障害当事者・支援団体、都道府県・市町村、公・私立学校、文化・スポーツの各分野の関係者21名で構成された対応指針策定のための協力者の一員として会議に参画させていただき 瀬戸課長補佐と仕事をご一緒させていただく機会を得ました。

文部科学省の所管事業は前述の協力者の構成でもわかるように 学校教育ばかりでなく文化やスポーツなど多岐にわたります。また 学校教育を所管するため啓発や教育といった今後 長期的に社会の変革に影響する分野を担当されることからもその責任の重さが計り知れます。

瀬戸さんが非常に有能な文部官僚であることは直ぐにわかりました。この法律や所管事業への理解が深く事前の準備が周到で 多様な質問に的確に答え 良い意味で議論の方向性を程よくコントロールしていました。

そして 会議の前後 私を含めすべての委員に声をかけ コミュニケーションをとりながら 直接の対話の中で意見の趣旨や各委員の真意(思い)をさりげなく確認し 対応指針の具体の内容に反映されていました。それはとてもスマートで爽やかな仕事ぶりで見事でした。

対応指針はその後 内閣府のヒヤリングやパブリックコメントを経て昨年11月26日に発出さています。

http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/material/1364725.htm

いわゆる障害者差別解消法の柱は「不当な差別的対応」と「合理的配慮の不提供」の禁止です。

このことが とりわけ学校教育に根付けば この国は大きく変貌してゆくのでしょうね。

何年先になるか分からないけれど その様子をいずれ文部科学行政の主翼を担っていったであろう若き文部官僚の瀬戸さんに自分の目で確かめて欲しかった。そう思うと残念です。

瀬戸さんは闘病の合間も 様々な場でこの対応指針を説明され 寄せられる意見や批判にも丁寧に対応されていたようです。誰よりも瀬戸さん自身がこの先を気にかけていらしたのだと思います。

そんな人の働きがあったことを 直接の面識はなくても 一人でも多くの人々に知っていて欲しいと思います。園長 東 重満